高齢者の家庭内で起こる不慮の事故は、実は交通事故よりも多く発生しています。
日常生活の中の思いがけないところに危険が潜んでいる可能性があるため、ご本人にとっても、見守るご家族にとっても、自宅のどこに事故のリスクがあるのかを理解し、日頃から注意しておくことが大切です。
では、具体的にどのような事故が多いのでしょうか。
厚生労働省の「人口動態調査」によると、65歳以上の不慮の事故による主な死因は次の通りです。
.jpg.webp)
家庭内では「転倒」「窒息」「溺水」が特に命に直結しやすい事故として多く発生しています。さらに、これらの事故は冬に増加しやすい傾向があり、寒い季節には一層の注意が必要です。
そこで本コラムでは、冬に気をつけたい家庭内事故として、
・ヒートショック(浴室での急変・溺れ)
・餅による窒息事故
・冬に起きやすい転倒事故
の3つに焦点を当て、それぞれのリスクと具体的な対策をわかりやすく解説します。
今回は第1部として「ヒートショック」を取り上げます。ご自身の安全のために、そして大切なご家族を守るために、ぜひ参考にしてみてください。
なお、「餅による窒息事故」と「冬に起きやすい転倒事故」については、第2部「高齢者が冬に気をつけたい家庭内事故とは?⓶餅の窒息・冬に起きやすい転倒事故」で詳しく解説しています。ぜひあわせてご覧ください。
冬の寒さが厳しくなる11月から2月にかけては、高齢者の「溺れる」事故が増える傾向があります。
.jpg.webp)
東京消防庁の統計(令和3年)によると、東京で溺水事故として救急搬送された高齢者のうち、90%以上が「住宅などの居住場所」で事故に遭っており、その多くは浴槽内で発生しています。さらに、そのうち約50%が死亡、約30%が重篤(生命の危険が強い状態)に至っていることから、高齢者が冬場に入浴する際には、浴槽での溺水事故に十分注意が必要であることが分かります。
そして、こうした浴槽内での事故には、「ヒートショック」が大きく関わっていると考えられています。
.jpg.webp)
ヒートショックとは、急激な温度差によって血圧が大きく変動し、心臓や脳、血管に強い負担がかかることで、体調に異常をきたす現象です。
主な症状には以下が挙げられます。
・立ちくらみやめまい
・失神
・脳卒中(脳梗塞や脳出血など)や心筋梗塞といった、心臓や脳の血管の病気の誘発や再発
溺水・溺死事故につながる主な原因としてヒートショックが関係するのは、浴槽内で失神してしまう場合や、病気の発症によって意識を失ってしまう場合です。失神しても呼吸は続いていますが、顔が水に浸かったり、体全体が沈んでしまったりすると、溺れてしまう危険性があります。
人の体には、体温をほぼ一定に保つ仕組みがあります。寒いときや暑いときには、自律神経が血管を細くしたり広げたりして、血圧を上げたり下げたりします。
【寒いとき】
・体温を逃さないように血管が収縮します。
・血管が細くなると血液を押し出す力が必要になり、その結果、血圧が上がります。
「血圧が上がる」とは、イメージでいうとホースの水を強く出し、水圧が高くなった状態です。ホース(=血管)に負担がかかると想像できるかと思います。
【暑いとき】
・体温を放散するために血管が拡張します。
・血管が広がると、血液が流れやすくなり、その結果、血圧が下がります。
「血圧が下がる」とは、イメージでいうとホースの口を広げた状態です。ホースが広がると水(=血液)が壁にかける圧力が弱まり、血圧が低下します。水(=血液)の勢いが弱まりすぎると、脳や心臓に十分な血液や酸素が届きにくくなってしまいます。
この変化自体は自然な反応ですが、短時間で繰り返されると血圧が急激に上下し、心臓や脳、血管に大きな負担を与え、ヒートショックをひきおこすことがあります。
入浴時にヒートショックが起こる典型的な流れは次の通りです。
暖かい居室 → 寒い脱衣所 → 冷えた浴室 → 熱い湯
.jpg.webp)
冬の浴室周りは、家の中でも特に急激な温度差が生じやすい場所であることが分かります。
さらに高齢者の場合、以下のような身体的要因も重なり、ヒートショックを起こしやすいとされています。
・年齢を重ねると血管が硬くなりやすく、血圧の変動が大きくなりやすい
・体温を調整する力が弱まり、急な寒暖差に対応しづらく、血圧が急激に上下しやすい
・持病があると血圧を安定させにくくなる
ヒートショックは、短時間の急激な温度差(それに伴う血圧の急変)によって起こりやすくなる健康リスクです。特に冬場の入浴時には、居室・脱衣所・浴室の温度差をできるだけ小さくすることが予防につながります。
ここでは「入浴前」「入浴中」「その他の対策」の順に、実行しやすい方法をまとめました。まずはできることから習慣にしていきましょう。
| 対策 | 補足説明 |
|---|---|
| ①移動する際は上着を羽織る | 温かい部屋から廊下などの寒い場所へ移動するときは、必ず上着や羽織物を着て急激な冷えを避けましょう。 |
| ②脱衣所・浴室をあたためておく | ・お風呂を沸かす際に暖房器具を併用し、脱衣所や浴室をあらかじめ暖めておきましょう。 ・浴室に暖房がない場合は、浴槽のふたを開けておくと浴室内の空気が温まり、脱衣所との温度差をやわらげることができます。 |
| 対策 | 補足説明 |
|---|---|
| ①お湯の温度と入浴時間を管理する | 目安:お湯はなるべく41℃以下、入浴は10分以内。 ・42℃以上の熱い湯は血圧の変動を大きくし、心臓に負担をかけるとされています。 ・長時間の入浴は体温を上げすぎるため危険です。 |
| ②浴槽に入る前に予熱する | シャワーやかけ湯で体を温め、急激な温度変化を避けましょう。 |
| ③浴槽の入り方に注意する | 一気につかるのではなく、足から順に少しずつ入ることで血圧の急変を抑えられます。 |
| ④浴槽から急に立ち上がらない | ・入浴中は血管に圧がかかり、体が温まると血管が開きます。 ・急に立ち上がると脳への血流が不足し、倒れる危険があるので、ゆっくり立ち上がる習慣をつけましょう。 |
| ⓹浴槽内で意識がもうろうとしたら入浴をやめる・湯を抜く | ・入浴中に意識がもうろうとしたら、すぐに入浴をやめて浴槽から出ましょう。 ・もしすぐに動けなさそうな場合は、溺れてしまうのを防ぐために浴槽の湯を抜くようにしましょう。 |
| 対策 | 補足説明 |
|---|---|
| ①飲食・飲酒・服薬後の入浴を避ける | ・食後は血圧が変動しやすいため、入浴は食後1時間ほど空けましょう。 ・飲酒後は血管が広がり血圧が下がりやすくなるため、入浴は控えましょう。お酒を楽しむときは、入浴を終えてからにすると安心です。 ・服薬している薬の作用によっては、血圧の調整機能が低下し、ヒートショックを起こしやすくなるため注意が必要です。 |
| ②水分をとる | ・入浴すると汗で体内の水分が減り、血液が濃くなって血栓ができやすくなります。 ・入浴の前後に水分を補うことで、血圧や血流の急な変化を防ぎ、脳や心臓の病気のリスクを減らせます。 |
.jpg.webp)
同居されているご家族がいる場合は、入浴する本人と周囲の家族が以下のような習慣を持つことで、異変にすぐ気づくことができます。
| ⓵入浴前に家族に声をかける(入浴する本人) |
|---|
| ⓶入浴中の様子をこまめに確認する(周囲の家族) 入浴時間が長い、音がしない、大きな音がしたなど異常を感じたらすぐに声をかけましょう。 ドア越しの声かけや一定時間ごとの確認など、見守りの方法をあらかじめ決めておくと安心です。 |
日本気象協会は10月から3月にかけて「ヒートショック予報」を提供しています。リスクは「油断禁物」「注意」「警戒」「気温差警戒」「冷え込み警戒」の5段階に分かれています。
住居の構造や設備、体調によって影響は異なりますが、ヒートショックへの注意や備えの参考として有効です。
.jpg.webp)
リスクに対し、備えを万全にしても、「もしも」の事態が起こるリスクを完全に防止することはできません。安心できる暮らしのためには、不測の事態に対する備えも重要です。東急セキュリティでは、ご家族に代わって高齢者をお守りするシニア見守りサービスをご提供しています。
普段から首にかけられる小型軽量の非常ボタンである「ペンダントプラン」、安否確認センサーと非常ボタンが両方備わった「置くだけプラン」など、工事も通信回線も必要なく、低価格で始めることができるサービスとなっております。
安否センサーで異常を感知したり、非常ボタンが押されると、警備員が直ちに自宅に駆けつけ、応急手当や救急車の手配を行うため、一人暮らしや日中一人になりがちな利用者様に好評です。どうぞお気軽にお問合せ下さい。
高齢者の冬の入浴は、環境的な要因と身体的な要因が重なり、ヒートショックにつながるリスクが高く、十分な注意が必要です。
■入浴前・入浴後の対策
・居室と浴室の温度差を減らす工夫(血圧の急変を防ぐ工夫)
■その他の対策
・入浴のタイミングと水分の管理
・家族による声かけや見守り
・ヒートショック予報の活用
ご自宅の環境や入浴の仕方を見直し、できる対策から習慣にしていくことで、ヒートショックのリスクを減らしていきましょう。
続きのコラムでは「餅による窒息事故」と「冬に起きやすい転倒事故」について詳しく解説します。冬の暮らしを安全に過ごすために、続きのコラムもぜひご覧ください。